(保留)AI時代、これからのキャリアは「役割」で考える

近年、キャリア相談の現場ではある変化が起きています。
それは、「AI時代、このままの働き方で通用し続けるのか」と不安を抱える人が増えていることです。

2023年にGoldman Sachsが発表したレポートによれば、生成AIの普及によって、世界で約3億人分のフルタイム業務が自動化の影響を受ける可能性があり、特に事務やビジネス企画、管理といったホワイトカラー業務では、その影響が大きいと指摘されています。

実際、これまで多くの時間をかけていた仕事が、今では数分で終わる場面も増えてきました。
効率化が進む一方で、変化のスピードに戸惑いを感じる人も少なくありません。

一方で企業側も、「余った時間や人材をどう活かすか」を前提に組織設計を見直し始めています。
最近では、採用活動を縮小したり、早期退職を募ったりする後押しになっているとも耳にします。

しかし、AIによって「仕事そのもの」がすぐに消えるわけではありません。多くの場合、AIが代替するのは仕事の中の「作業」部分です。

では、AI時代において、人はどこで力を発揮すべきなのでしょうか。

この記事では、AI時代にホワイトカラー職として自分らしく活躍できるために、「役割」という観点からキャリアを捉え直す重要性について解説します。

この記事では、
・AIは仕事を奪うものではなく、「作業」を効率化するもの
・AI時代は、「人にしかできない役割」の比重が高まる
・「職種」ではなく、どの「役割」で力を発揮できるかがキャリアを左右する
を整理しながら、これからのキャリアの考え方を解説します。

AIに置き換わるのは「仕事」ではなく「作業」

まず整理しておきたいのは、AIが代替するのは「仕事そのもの」ではなく、仕事の中の「作業部分」だということです。

置き換わりやすい(AIが得意な)業務

・定型的な資料作成(構成、文章作成)
・情報収集・要点抽出(比較、整理)
・データ処理(分析、集計)
・議事録作成・タスク抽出(会話の要約、TODO化)

AIは、インターネット上の公開情報をベースに最適な回答を出すため、特に解や型がある程度決まっている業務では高い精度を発揮します。

ただし、人が完全に不要になるわけではありません。
AIに適切な指示を出し、アウトプットの妥当性を判断し、現場に適用できる形に整えるといった役割は引き続き人が担います。

AIは「仕事を奪う存在」というよりも、人が担うべき領域を変化させる存在です。その結果、企業から評価されるポイントも大きく変わっていきます。

 

これから評価されるのは「人にしかできない役割」

では、作業が減った分、人はどこで力を発揮すべきなのでしょうか。
それは、「人にしかできない役割」です。
※本記事が示す役割は、仕事の中で自分が具体的に担う機能や行動のことを指します

・部署間の感情や利害を汲み取り、意見をまとめる調整力
・正解のない場面での意思決定力
・顧客の本音を引き出す対話力
・AIを業務に組み込み、現場で使える形に整える力

感情を汲み取ったり、言語化しにくい状況を読み取って対応する領域は、AIが不得意な領域(予測回答はしてくれるが細かい部分を汲み取りにくい/AIに上手く伝えにくい)でもあるので、求められる比重が増えていきます。

例えば、営業職の場合。

・AIが得意な領域:提案書作成/商談記録の要約/データ分析
・人が担う領域 :商談での対話/提案の最終判断/関係者との調整・関係構築

営業という仕事自体はなくなりません。ただし、人が担う領域の比重が増えていきます。

AI時代は、「作業を早くこなせる人」よりも、作業をAIで短縮し、「人ならではの役割」で成果を出せる人が強くなる構造なのです。

ちなみに、先述の世界経済フォーラムのFuture of Jobs 2023でも、情報処理やデータ分析などのタスクは自動化が進む一方で、意思決定や対人コミュニケーションなどは引き続き人が担う割合が高いとされています。

参考)想定される役割変化の事例

ケース1)総務 / 女性
相談者は、問い合わせ対応や書類作成、情報整理などの業務を正確かつスピーディーにこなしてきました。上司からも「対応が早い」「丁寧で分かりやすい」と評価されていました。

ところがAI導入後、そういった作業が短時間でできるようになり、これまで評価されてきた作業の優位性は薄れていきました。

その分、各部署と連携して「同じ問い合わせが起きない仕組みを作る」「ルールの抜け漏れを特定する」「現場が守れる運用を設計する」といった、業務改善や仕組みづくりが以前より求められるようになりました。

相談者自身も、致し方ないことだと理解していました。しかし、これまで強みとしてきたのは作業の正確さや処理の速さであり、業務の構造を整理したり仕組みを設計したりする経験は多くありませんでした。その結果、仕事はきちんとこなしているのに以前ほど評価が伸びにくくなり、求められる役割と自分の強みとのギャップに悩むようになっていました。

ケース2)Webデザイナー / 男性
相談者は、バナーや資料などのデザイン制作を担当していました。指示された内容をもとにレイアウトや表現を整え、形にする仕事で評価されていました。

しかしAIツールの普及により、デザイン案の作成や画像素材の生成は短時間でできるようになり、制作作業そのものの比重は次第に小さくなっていきました。

その一方で、「誰に何を伝えるのか」「どの案が目的に合っているのか」を整理し、関係者とすり合わせながら方向性を決めるディレクションの役割が、以前より重要になってきました。

相談者は制作には慣れていたものの、目的を言語化して案を絞ったり、関係者の意見を整理して方向性を定めたりする業務の経験は多くありませんでした。そのため、求められる役割の変化にうまく対応できず、戸惑いを感じるようになっています。

 

キャリア判断は職種ではなく役割で考える

キャリアを考える際、多くの人は「営業」「事務」「デザイナー」といった職種ベースで判断しがちです。もちろん職種で考えることも重要ですが、それだけでは企業とのミスマッチが起きやすく、特にAI時代においては再現性のあるキャリア選択が難しくなります。

なぜなら、同じ職種であっても、企業文化やサービス内容によって求められる役割の中身や重さが大きく異なるからです。

営業職ひとつとっても、新規開拓が中心の営業と、既存顧客との関係維持が中心の営業では、求められるスキルも行動も変わってきます。例えば、前者ではスピード感や切り替えの早さ、後者では関係構築に向けた傾聴力や丁寧な対応力が優先的に求められる場合があります。

ここで重要になるのが「役割」という視点です。
先述した通り、役割とは仕事の中で自分が具体的に担う機能や行動のことを指します。
一方で、一つのポジションの中でも、実際には複数の役割が同時に求められます。そのため、キャリア選択においては、まず「その企業・仕事で求められている役割は何か」を具体的に把握することが重要です。単に職種名を見るのではなく、「このポジションでは何を期待されているのか」「どのような行動が成果につながるのか」というレベルまで分解して捉える必要があります。

さらに見落とされがちですが、「役割をどうやって果たすか」というアプローチも非常に重要です。企業側から明確なやり方が指定されている場合もありますが、多くの場合は一定の裁量があります。その中で、自分の得意な方法で役割を遂行できるかどうかが、成果の出やすさやストレスの少なさに直結します。

例えば「顧客との関係構築」という役割であっても、その実現方法は一つではありません

・相手の本音を引き出すコミュニケーションが得意な人
・課題を整理し、論理的に伝えることが得意な人
・細かく丁寧なフォローを積み重ねることが得意な人

だからこそ、自分自身のスキルや経験を棚卸しし、それぞれの役割に対して「何が得意で、何が不得意か」を整理します。そして、どの役割に優先的に注力すべきかを見極めていくことで、限られた時間やリソースの中でも成果を出しやすくなります。

つまり、キャリア選択において本当に見るべきなのは、
「どの職種か」ではなく「どの役割を、どの方法で担うのか」です。

この視点を持つことで、表面的な職種の違いに惑わされず、自分に合った仕事を見つけやすくなります。また、AIによって代替されやすい業務と、力を発揮し続けられる領域を見極めるうえでも、この「役割ベース」の考え方は非常に有効です。

これからの時代においては、職種名にとらわれるのではなく、自分がどの役割で力を発揮できるのかを起点にキャリアを設計することが、長期的に成果を出し続けるための鍵になります。

 

企業はすでに「職種」ではなく「役割」で人を見だしている

働き方や組織のあり方の変化に加え、AIの普及も背景となり、企業側では「仕事の任せ方」が変わり始めています。

その背景として大きいのが、近年広がっている「ジョブ型雇用」や「スキルベース組織」への移行です。
※ジョブ型雇用:職務内容(ジョブ)を具体的に定義し、必要なスキルを持つ人材と雇用契約を結ぶ
※スキルベース組織:従業員が持つスキルを中心に人材の配置、評価、育成を行う組織モデル

これらに共通しているのは、従来のように職種やポジションで人を固定するのではなく、その人が持っているスキルや対応できる範囲に応じて仕事を割り当てていくという点です。

こうした変化によって、企業側の「人を見る基準」も少しずつ変わってきています。

これまでは、営業や事務といった職種に当てはめて、「その仕事ができるかどうか」で判断されることが一般的でした。
今後は、「どの業務にどの程度関わって活躍できるか、任せられるか」といった視点で見られるようになっていきます。

そのため、キャリアを考えるうえでも、「どの職種に就くか」だけでなく、自分がどのような仕事に向き合っているのか、どの範囲を担っているのかといった役割ベースで見ていくことが重要になります。

 

まとめ

AIの進化によって、これまで仕事の中で多くの時間を占めていた作業は少しずつ効率化され、人にしかできない領域での活躍が求められていきます。

企業側でも、ジョブ型雇用やスキルベースの考え方が広がる中で、職種ではなく、個人がどのような仕事に関わり、どの範囲で価値を出しているのかが、これまで以上に見られるようになっています。

そのため、これからのキャリアを考えるうえでは、「どの職種に就くか」だけでなく、
自分がどのような仕事に関わり、どこで力を発揮しているのかという視点で捉えることが重要になります。

・自分はどの仕事に多くの時間を使っているか
・その仕事は今後も人が担い続けるものか
・人が担う領域で成果が出せいてる役割・環境は何か
・今後企業がより求める役割は何か

まずは、自分がどのような仕事に関わっているのかを整理すること。
そのうえで、どのような役割を担っていくのかを考えること。

そうすることで、AI時代において、自分らしいキャリアを築くことにつながっていきます。